一期一会バス

朝の出勤中、乗っていたバスが急に予定にないバス停で停まった。

 

車内アナウンスで申し訳なさそうに、このバスは利用できなくなったため、降りて別の公共交通機関に乗り換えてもらうよう案内された。

後部座席に座っていた私は、隣の人と顔を見合わせる。

 

「なにがあったんですかね」

「なんでしょう?」

 

狐につままれた表情で、バスを降りていく十数人の乗客。

 

降りぎわにバスの運転手さんに事情を訊くと、停まるべきバス停をひとつスキップしてしまったそうだ。

 

バス停スキップは業務上さしさわりがあるだろうから「なんだ、そんなこと」ではないかもしれないけれど、体調不良や事件などの差し迫った事情ではないとわかってホッとした。

 

申し訳なさそうに謝るまじめそうな運転手さんに「大丈夫ですよ〜」と言って降りる。

 

さきほど話した女性とレアな体験ですね、と話しながら、最寄りの地下鉄駅まで一緒に歩いた。

 

事情を知った女性は「そういうこともありますよね」と言った。

誰にもミスはありますよね。

 

生きていると、日々いろんな出来事が大・中・小おきる。

ミスも大・中・小おきる。

おきるものだし、おこしてしまうもの。

 

多くのミスや失敗をしてきた人ほど、他者に寛容になれるかもしれない。

 

満員の地下鉄に、女性と一緒に乗りながら「この時間の地下鉄は新鮮です」と言うと、「そうですね」とその方も笑った。

 

天神で降りるその人に、ふと思い立ってバッグの中の飴を渡してみた。

 

くしゃくしゃ包装がちょっと恥ずかしかったけど、この人なら寛容に受け取ってくれるかもしれない。

 

「ありがとうございます」

 

にこっと笑ってその人は飴を受け取り、地下鉄を降りていった。

 

なにがおきてもよい一日になりますように。