• 言葉を超えて気持ちを伝える

    写真、スタンプ、絵文字、ことば。

     

    とある人が、とある事情で、言葉を交わし合うのに困難を感じる相手へ始めたのが、写真交換だった。

     

    日常の一場面を写真に撮って、その画像を相手に送る。

    文章はない。

     

    すると、相手からも日常の一場面の写真が返ってきた。

     

    写真交換日記みたいな日常が始まった。

     

    かつて二人は、お互いをわかり合うために懸命に言葉を尽くしてメッセージのやりとりをした結果、言葉の解釈の違いで、逆にお互いの距離を広げてしまった時期があった。

     

    もうだめかもしれない。

     

    諦めかけていたある日、ふと思いついて、相手へ一枚の画像を送ってみた。

    なにげない日常の風景を写真に撮ったものだ。

     

    添えた言葉はいつもより短い。

    文章の代わりに写真を送るねと、それくらいの内容だ。

     

    すると、相手から今日撮ったらしい写真が届いた。

    そこから、ふたたび交流が始まった。

     

    言葉はとても便利で、ときどき不便な道具だ。

    言葉はとても繊細で、ときどき愚鈍な手段だ。

     

    言葉を知るほど、言葉の限界を知る。

    言葉を手放すほど、言葉の大切さも知る。

     

    写真、スタンプ、絵文字、ことば。

     

    私たちはさまざまな手段を使って、相手のことをわかろうとしたり、相手に自分のことをわかってもらおうとする。

     

    言葉で表せない気持ちを交わし合う写真のやりとりが、二人をゆっくり再生させている。


    どんな手段でも、その奥に根ざす気持ちが相手に届くのだと思う。