肩書きが「初めて」をつれてくる

このあいだ授業終わりに、初めての体験をしました。
優勝旗のペナントリボン(優勝した学校名を書き入れる長い布)に、学校の名入れを頼まれて書いたんです。
あとで知ったのですが今夏、あるスポーツ大会でわたしの勤める学校が優勝したそう。パチパチパチパチ

 

最初は、学校の上長がリボンに名入れしようとしたそうです。
が、優勝旗の先端にくくられた何本ものリボンの束の文字群を見て、プレッシャーで書けなくなった、と。
教務室を出て実物を見に行くと、たしかに大きな優勝旗が目立つ場所に飾られ、歴代の優勝校の名と大会の回数などが手書きで書かれたペナントリボンがたくさん提げられていました。
紅白のペナントリボンに縦書きで記された文字は、なかにはマジックペンで書かれた素朴なものもあったけれど、ほとんどが賞状のような立派な筆耕(ひっこう)がずらり。
優勝校を渡り歩いてきた旗の貫禄がありました。
(いぇぇぇうそぉ、これに続くの?)


「先生、お願いします」
真っ白のリボンと黒ペンを渡す上長の目は、困りながらもゆったり微笑んでいます。
「わかりました」
ああそうか。
字の先生という肩書きを通して信頼してくれているんだ、知り合って日の浅いわたしを。
それで、内心ひるみつつ笑顔で引き受けたのでした。

 

令和六年度 第〇〇回大会 優勝 〇〇〇〇学校 
授業が終わった後の誰もいない教務室で、全長1m30cmほどのペナントリボンをテーブルの幅いっぱいに広げ、上下ぴったり収まるように書きました。
上長の先生にリボンを渡すと「うん、やっぱりお願いしてよかった」と笑って、こんなものしかなくてとクッキーをもらいました。

 

乗り過ごしたバス停で次を待ちながらクッキーをかじり、おいしくて、引き受けてよかったと思いました。


わたしに「字の先生」の肩書きがあったから、きっと回ってきた頼みごと。
そう思うと、肩書きの存在がその人を肩書きたらしめるのだ、と思いました。
優勝旗に筆耕したのは初めてです。
緊張する体験ですが、一度でもやれば、初めてではなくなります。
年を経て優勝旗に垂れ下がるリボンが増えるように、自分の体験知のリボンがひとつ増える。
思いがけず「初めてのこと」が増えた日でした。

 

体験の難易度はそれほど高くなくても、たんに「やったことがない」事実が壁となって、体験そのものを特別視することがあります。
なんだか難しそうで、大変そうで、特別な人しか役目がなさそう。
いやぁ自分にはとてもじゃないけど、と思っていること。


ですが、その特別視が、新しい体験を自分に与える機会を遠ざけてしまいます。
「やったことがないから」と手をつけなければ、ずっとやったことがないことのままです。

 

 

世の中には会社の役職以外にも、さまざまな肩書きがあります。


「経営者」「親」「父」「母」「部長」「マネージャー」「リーダー」etc.

 

たいてい肩書きと中身は、最初のうちはしっくり合いません。
「自分に、マネージャーが務まるだろうか」
「いい母親になれるのだろうか」
肩書きは大きく、中身は小さく感じて、ぎこちないものです。


たとえば小学校に入学して真新しいランドセルを背負うように、最初のうちは、肩書きの方が一回りも二回りも大きいのです。
「小学生」という肩書きが、ランドセルになじむまで持ち主の成長を待たず、体格に合わぬ荷物を背負わせます。
頼りない足取りから始まり、6年かけて背負い続け、気づけばランドセルを小さく感じるほど、たくましい背中に育っていきます。

 

 

 

わたしが自営業を始めた当時の肩書きは「ライター」でした。
ライターは資格などの条件がなく、名乗れば誰でもライターになれます。
その不確かな肩書きに輪をかけて、自分の実績のなさと自信のなさ。
「ライターなんて、わたしにやれるのだろうか」
名乗りながらも、落ち着かなかった頃の気持ちを思い出しました。

 

最初のうちは、知り合いの経営者さんや知人のプロフィール文を書いていました。
それだけでは食べていけないので仕事を探し、小さな会社に「なんでも書きます」とライターとして雇われました。

 

仕事の実績はほぼゼロ。
が、ライターを名乗るからには、当たり前ですが会社内で「書く仕事」がきます。
依頼されるまま、雑誌に商品紹介記事を書いたり、旅記事を書いたり、エッセイの編集をしました。
コピーライターも、編集も、企画も。
書くにまつわる仕事をなんでも依頼されるまま、時に発案してやりました。

 

会社勤めと並行し、個人事業主として経営者さんのブログ記事や、社長インタビュー、本のゴーストライターも経験しました。
4年ほど会社で働き、個人の仕事量が増えたのを機に会社を辞めました。
その頃には、ライターという肩書きにあまり緊張しなくなっていました。
目の前にきた仕事を懸命にやるうち少しずつ実績が増え、わたしの背中になじんでいったからです。

 

たとえ実績がなくても、肩書きが、新しい可能性をふいにつれてくることがあります。
そんなとき、もし自信のなさが先立って「自分はまだその器じゃない」と先送りしていれば、器を拡げるまたとないチャンスを逃しているかもしれません。

 

「やったことないから」断る。
「やったことないから」受けてみる。

 

どちらを選んでも、わたしたちは自由です。

 

ですが、未体験の「初めて」を自分に贈る人は、同時に、肩書きも超える自由が与えられるのだと思います。



 

 

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