憶えていない言葉が、誰かのなかにいる

転職したTさんの仕事の一環で
久しぶりに会うことになった。


ネパールカレー屋で
ナンカレーセットを食べながら
互いの仕事の話、
Tさんが一人暮らしを始めた話、
最近できたTさんの恋人の話など。


私のふた回り年齢が下のTさんは
とても礼儀正しい。
Tさんとはめったに会わないが、
会えばいつも和やかな話になる。


福岡から彼女の暮らす沖縄へ飛び、
そのまま2週間すごしても
ネット環境があれば問題なく
仕事ができてありがたいです、と
転職した仕事に感謝している。


カレー屋を出ると
「送りますよ」とTさん。


駐車場の車、前に乗ったときと違う。
「買いました」
私の視線に気づいたTさんが言った。


「しんがきさんを
初めてぼくの車に乗せたとき、
しんがきさんが言ったこと
ぼく憶えてます」

「なんて言ったっけ」

「『あ、ハローハニー』って、
ぼくの車のナンバー見て」


長年乗った愛車がついに動かなくなり
車を買い替えるとき、
ディーラーさんに
「番号どうしますか」と訊かれて
「じゃ8682で」と。


「それで今回も
ハローハニーにしました」
と笑うTさん。


バスと電車を1時間乗り継いで
講座に通っていた私に
帰りが同じ方角だからとTさんに
何度か車で送ってもらった。


心理学講座の夜学コースに
通っていた頃に彼と知り合ったので
7年前のやりとりだろう。


おそらくそのときの私が
車のナンバーを見て
「ハローハニーだ」と言ったのか。
憶えていないが言いそうだ。


ささいな内容であっても
言葉に載せる意図のサイズも問わず、
相手の心に残るときがある。


たとえば私も
7年前に彼が何気なく話したから
『アルケミスト』を知り
山川紘矢さん、亜希子さんの訳書を
読むようになった。


自分が放った言葉のかずかずの、
なにが相手の心に残っているか
コントロールできないものだ。


ほかにも
言った当人が憶えていない言葉が
誰かを温めたり、冷やしたり、
励ましたり、チクチクしたり
とくに理由もなく
誰かの記憶にいたりするのだろう。

 

あなたが憶えている
誰かの言葉はなんですか。

 


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https://officesayou.net/np/usf/761crkj7fc4n.html


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