Day20 「居心地が良い場所」の略を「居場所」としてみたら

 

朝、部屋の窓と玄関を開けると、線香の香りがただよってきた。

「おはよう、Sayo」

「おはよう、サンディさん」

ゲストハウスの受付で、サンディさんが朝の儀式の準備をしていた。

 

 

「見ててもいいですか?」

「いいよ」

 

 

お祈りする場所、いくつあるのだろう。
カウンターに一つ、高い神棚に一つ、その隣にも二つ。
フロント前に停まっているバイク3台の座面にも一つずつ。
数えようと思って途中でやめた。

 

いたるところに宿る神様に、お供物と聖水を振りかけ、香を焚く。

 

 

 

同じ敷地内で、近所の男性も儀式をしている様子が見えた。
あの人は、もしや。

 

思い出した。
ライターを返さないと。

 

バリに来て間もない頃、福岡の叔父さんが亡くなった。
焼香のため白檀のお香を買ったあとで、ライターがないのに気づき、近所の人に借りたままだった。

 

わたしが滞在するゲストハウスは、同じ敷地内にナンバリングされたこじんまりした平屋の建物がいくつもある。
わたしの部屋は04、近所の人の部屋(建物)番号は01。
徒歩10秒の距離。

 

庭掃除をしているサンディさんに声をかけ、事情を話し、01に住んでいる人の名前を訊いた。


なんと、わたしがライターを借りたのは、ここのゲストハウスのオーナーだと判明。
(滞在当初はサンディさんがオーナーだと勘違いしていた)

 

敷地はオーナー一族が住んでいて、奥にはいくつも建物と寺院がある。
家の敷地内に寺院がある。
なんか普通にすごい。

 

「オーナーの住居エリアの、奥の方に行っても大丈夫?」

と訊くと、サンディさんが

「ぜんぜん構わないよ」と答える。

 

仕切りや境界や塀で区切られ、そこを越えると不法侵入になりそうなデリケートさを含む、日本の都市部とはずいぶん違う。
どこもゆるくつながっている。
建物内の様子もなんとなくうかがえるオープンさがある。

 

ライターを持ってオーナーさんの敷地に行くと、奥さんがいて手を振ってくれた。
奥さんは台所の床を掃除していた。

 

クマラさんにライターを返したいのですがと話すと、
「今お祈り中だから、ちょっと待っててね」と。

 

たしかに門の向こうに、地べたにあぐらをかいて祈りを捧げるクマラさんが見えた。
お祈りが終わるころに奥さんがクマラさんに声をかけた。

 

 

ライターのお礼を伝え、返すのが遅くなったことを詫びると、
「ぜんぜん構わないよ」と穏やかに笑った。


よかったらどうぞ、と日本から持ってきていた抹茶味のポッキーを渡すと、笑顔で受け取ってくれた。
甘いものよりしょっぱいやつがよかったかな。
バリでさいきん抹茶が人気と聞いて、抹茶ミルクキャンディや抹茶ポッキーなどを持ってきていた。

 

いつも吠える小さな犬がわたしの足元にやってきて、撫でろ撫でなさいとアピールするので撫でる。

「噛まないから大丈夫だよ」


クマラさんはよくこの犬を散歩させている。
小柄だけどいつもしっかり吠えて、番犬として立派に仕事している。

 

オーナーの名前は、Cok de Kumara(クマラ)さん。

「Cok(チョック)」は王族の子孫につけられる名前だと、前にアラカくんが教えてくれた。

広い敷地にいくつも建物があって、そのうち6部屋をゲストハウスとして運営している。

 

ライターやちょっとしたことをきっかけに、なんとなく「知り合い」が増える。
ゆるい「顔見知り」が増える。

 

すごく親しいというわけでもない。
お互いについてほとんど知らない。

 

サンディさんのことも、アラカくんのことも、クマラさんのことも、ほとんど知らない。
向こうも、ゲストハウスを出入りする多くの旅人の一人のわたしが、日本人ということくらいしか知らない。

 

それでも、顔を見れば挨拶して、「おはよう」や「おやすみなさい」を交わしあう。

 

自分の居場所との縁が結ばれるきっかけは、すごい世界遺産や、風光明媚な観光地や、めずらしいグルメより、こういう小さな繋がりだと思った。

  

ここのところずっと、「居場所」について考えている。

 

わたしたちはこれまで、特別な人でない限り居場所は1ヶ所だとなんとなく信じているふしがあった。
そんななか、「二拠点生活」「多拠点生活」という言葉も、ちまたで聞くようになってきた。
ADDress など多拠点生活を支えるサービスも
増えている。

 

ここ最近、わたしが考えている居場所は、セカンドハウスを持つとか、別荘を持つとか、そういう経済的におおがかりな意味ではない。
もとよりそんなお金はない。
あってもたぶん、違うことにお金を使う。


昔から、持ち家がほしいと思ったことがない。
「憧れの持ち家」に憧れてみようとしたけれど、どうにも違和感を感じて手放した。


わたしがほしいのは拠点だ。
「居心地いいな」と思える場所だ。

 

定住先、住民票のあるところ、そういう意味を超えた「居場所」がほしい。

そんな居場所は増やせると、ここ数年で気づき始めた。

 

「居心地の良い場所」をちぢめて「居場所」とするなら、それは一つでなくていい。

自分の居場所は、増やせる。

 

動けばいい。
確かめてみるといい。
 

 

その場所が居心地いいかどうかは、本人にしかわからない。

 

午後にカフェの往復で3km、夜は無目的に5km歩く。
あてどなくただ歩く。

 

夜のコンビニで、カップラーメン買って食べているバイクタクシーの男性たちに倣って、真似してみた。
バリで初のカップラーメン。
コンビニでお湯をもらってコンビニ前のカウンターで食べる。

 

確かめて実感。
コンビニ前カウンター with カップ麺は、居場所じゃなくていい。

 

 

むかしオーストラリアで食べた、懐かしいミーゴレン味。
お湯いれすぎたらしくスープしゃばっしゃば。

 

 

 

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