知らないことを知ること
知らない言葉を博多港で見つけました。
海のそば、方位盤のかたちをしたオブジェに控えめに彫られています。
「ゆらう」
揺れながら笑うような響きです。
目の前の海でタプタプなめらかに揺れる波と、言葉の音が重なって、すてきな言葉だと思いました。
てっきり造形作家が生み出した創作語だろうと思っていたのですが、後で調べると、もともと存在する言葉でした。
知らない言葉がたくさんあります。
言葉にとどまらず、知らないことは数え切れないほどあります。
きっと「知っている」ことの何割かも、思い込みだったりするのでしょう。
わたしたちが「知っている」ことは、実は思い込みや勘違いで、本当のことを知らず、誤解しつづけているものがたくさんあるんだろうな。
だとすれば、生きることは理解と誤解をくり返しながら「知ること」と、「知ったつもりの誤解を解く」ことのワンセットなのかもしれません。
「ゆらう」は、「一つところにとどまる」「進むことを控える」ことを意味するそうです。
人間関係の誤解や、自分自身への歪んだ評価。
それら誤解を少しずつでも解いていく時間に、ゆらう。
無理に進もうとしないで、ゆらいで、とどまる時間をつくる。
知らなかったことを知っていくほどに、「いかに自分が知らないか」を思い知ります。
無知な自分を知る体験は、恥ずかしくて、豊かで、うれしいことだなと思います。
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