縁起モノに意味を求める理由を考えてみた
廃校の近くに住む子どもが、補助輪付きの自転車に乗って校庭にきていた。
「何さい?」と聞くと、小さな手をパッと開いた。
校庭には錆びたブランコと鉄棒があり、ペンキは剥げているが現役だった。
5歳の男の子は、かつて校門が大きく開いていて、教室に人が集っていた光景を知らない。
母親といっしょにせまい通用口から自転車を入れて、校庭を走り回る。
校舎をぐるり一周したら、裏手のツバキが満開だった。
親しい親族の納骨が終わって、福岡に帰ってきた。
新年、島に空き家が一軒増えた。
今は生活感の残る部屋も、住人のいた気配が消えていくだろう。
鍵が閉じられた色の家の前に、南天の実の赤さ。
南天には「難を転じて福とする」と言われ
「縁起がいい」とされるらしい。
有毒性の南天も、
花首がポトリ落ちるさまから「縁起が悪い」とされるツバキも、
縁起なんて気にしない。
ただその生をまっとうしている。
毒があっても、花が落ちても、
与えられた生が、ただ閉じたり開いたりするだけ。
生死の縁起の理由づけの外側で、ただ命をまっとうしている。
良いも悪いも諸行無常。
わたしたちの体は、生まれた瞬間から死に向かうつくりだ。
縁起に意味を求める世界観が、だからこそ求められるのかもしれない。
廃校の裏手に満開のツバキがきれい。
閉じたものと開いたものが同じ場所に自然に在る。
わたしたちも、心の内側に
閉じたものと開くものを同時に抱えて
新しい一年をそろそろと始める。
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