ギブアンドテイクじゃなく、プラマイゼロじゃなく

子どもの夏休みも終盤、福岡アジア美術館へ二人で行ってきた。
8月25日まで「エルマーのぼうけん展」が開催されている。

 

 

『エルマーのぼうけん』シリーズの3冊は、去年の誕生日に子どもにプレゼントしたものだ。
船に乗って地球を周った4ヶ月間、母親がいないあいだに迎えた誕生日の贈り物だった。

 

帰国後、本の表紙はつるつるで傷ひとつなく読まれた跡がなかった。
気に入らなかったかな、とためしに、寝しなに読み聞かせてみると喜んでいた。

 

好きな物語らしい。だけど、子は一人で読もうとはしない。
夜に読み聞かせをすると楽しそうにしている。
それで、本の好み以上に「母親に読んでもらえるモノ」と捉えているのだとわかった。
物語以上に、母親と一緒に過ごせる装置の役割を、3冊が果たしていた。

 

 

アジア美術館に展示された作者のノートや、挿絵画家の原画の繊細な鉛筆タッチがすごかった。
作者が8歳の頃の創作ノートが残っているのは、大事にとっておいた本人や家族がいたからだ。
知恵と行動で、りゅうの子どもを助けた9歳の男の子エルマーに、作者の自由への願望が表れていると解説があった。

 

展示会場を出ると、エルマーグッズの販売ブースがあり、マグカップや原書、Tシャツやぬいぐるみなどが売られていた。
子が、りゅうのぬいぐるみに惹かれているのがわかった。


エルマーが冒険にでるきっかけになった、りゅうの子どものぬいぐるみが入れられた段ボールに手を伸ばし、水色と黄色の明るいしましま模様のりゅうをちょっと触って、元に戻し、また見ている。
なんというか、言葉にならない繊細な表情をしていた。

「買っていいよ」と言うと、目を見開いた。
「いいの?」

困り顔とうれしい顔が混じったおろおろした目をしている。値札を見たのだろう。
普段わたしがぬいぐるみを買わないのを知っているので、なおさら戸惑っている。

「いいよ」
「ほんとにいいの?」
「欲しい?」
「うん」
「ならいいよ」
「ええー……」

段ボールに無造作にはいった何体ものぬいぐるみたちを、どう扱おうかあぐねる手つきに、声をかけた。

「どのりゅうがピンと来るか、探してみたら。見つかるよ」

子どもがうなずき、ちょっと段ボールを眺めてから、そっと触れ「これ」とすぐに一体を取り上げた。
会計をすませて会場をでようとすると、子が言う。

「ありがとう。お母さん、してほしいことない? 買ってくれたお礼がしたい」
「特になんもないよ」
「でもお礼がしたい。何かない?」
「うーん、ないなぁ」
「うーん、でも」

体を揺らしながらまたも、うれしいと、困ったの混じった顔をしている。

 
帰り道、後部座席でバスに揺られながらぬいぐるみの小さな羽根をばたつかせ、くるくる踊らせ楽しそうな子と一緒に遊びながら、さっき子の言った「お礼」について考えていた。

 

無条件で欲しいものを手にいれることに、なにかの引け目を感じているのだろうか。
遠慮なのか、申し訳なさなのか、それはなんなのだろう。どこからくるのだろう。
子だけじゃなく、わたしにもものすごく覚えのある感覚だ。

 

もしも値札の0が一個少なかったら、こうも戸惑わないのだろうか。
だとしたら、「値の張るモノは自分にもったいない」と無意識に信じているのだろうか。


あるいは、自身の欲を満たす「自分がプラス」と引き換えに、親の財布からお金が減って「親がマイナス」になるという結果に、親から奪う痛みを感じているのだろうか。

 

一緒にぬいぐるみのしっぽを撫でながら帰宅した。
子は夕食後の夜のサイクリングのあともずっと
ご機嫌で、布団を敷いたあと、ぬいぐるみに自分の掛け布団をかけていた。

 

 

翌日仕事をしていたら、ふっとある思いが浮かんできた。
「これだ」なパキッとした明快な答えではないけれど、たぶん、わたしが伝えたいことはこうだ。

 

 

子がモノを得てプラス(+)となり、親はカネを失いマイナス(ー)となる式じゃないんだよ。

欲しいものを得られる嬉しさのプラス(+)と、欲しいものを与えられる喜びのプラス(+)が、同時に成り立つ式があるんだよ。

これがその例だよ。

お母さんは算数あまり得意じゃないから、うまく説明できるか自信ないけど、でも実際そうなんだよ。

欲しいと伝えてくれてありがとうなんだよ。



それをなんども伝えることだな、わたしの言葉と態度で。
ああ、理屈の通ったごもっともな説得力よりも、親が笑うこったな。

きょう仕事から帰ったら伝えよう。

 

 

 

 

 

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