「なんの役にも立たないよ」

全国で40℃を超えたところが数ヶ所あったそうですね。

あんまり暑くて室内で座ってばかりいたら、腰がガチガチに凝ってしまった。

それで、久しぶりに図書館で本を借りてきた。うち1冊はムーミン。

 

 

ムーミンが俗っぽく、スナフキンが辛辣で面白い。

 

丸くほんわかした造形のムーミンは、てっきり世間離れしたマイペースな性格だと思っていた。

だけど、お話のムーミンは人目ばかり気にしている。

自信のなさを隠し、自分のしっぽの毛並みにこだわり、人からどう見られるかが気になって仕方ない。

 

で、パーティの招待状の返事の作法を心配するムーミンに、「2つに折って捨てちまえ 頭を冷やせ」とスナフキン。

 

 

周囲へのアピールに一喜一憂し、気もそぞろのムーミンに、丸太を切りながらスナフキンは言う。

「新しい桟橋さ。手伝ってくれ!」

「楽しそう…時間があったらなあ」と後ろ髪ひかれるムーミン。

 

結局ムーミンは『すごい連中とすごいパーティ』に自分の時間を明け渡す。

(ばかなやつ)と呆れるスナフキンは、自分の時間を明け渡さない。

どちらも同じ一日。

(ムーミン・コミックス『黄金のしっぽ』筑摩書房より画像引用)

 

ムーミンが着飾って参加したパーティは、楽しいどころか気疲れするばかり。

ついには、スナフキンの手作り桟橋が完成間近なのを見てムーミンは「ぼくが手伝ったのに!」と憤慨する。

スナフキン「きみは暇がなかったろ?」

 

他者評価を得ようと忙しく走り回るムーミンと、自分の時間を自由に味わうスナフキン。

どちらも同じ一日。

 

何の気なしに手に取った本だったけど、借りてよかった。

大人歴が長くなるほど「ばかなやつ」と歯に衣着せぬ言動をストレートに示してくれる人が少なくなる。

 

人が褒めるしっぽを自慢するムーミンに、スナフキンはにべもない。

「なんの役に立たないよ。そんなの切り取って釣りにこいよ」

 

自分をピリッと諫めてくれる誰かを、本の中にも見つけられる。

 

 

 

 

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