地獄が教えてくれる自分

わたしの通う鍼の先生は、かつて学校の先生をやっていたそうだ。


そこの鍼灸院は広告費を一切かけず、口コミだけでお客さんが増え、海外からも治療にくるほど繁盛している。
今のように事業がうまくいくまで「いくつか地獄をみた」という。
その地獄の一つが、十数年前に学校で担任をしていた頃だった。


今よりずっと老けこんでやつれ、当時の知り合いがいまの自分を見ても気づかないほど人相が違っていたらしい。


教師生活が地獄だったのは、学校内外の学生のトラブルを一手に引き受けたこと、誰も味方がいなかったこと、授業妨害があったことなど、いろいろ絡むのだけれど、一言でいうと「教えるのが性に合わなかった」から。


休み返上して誰も居ない学校に行き、終わらない仕事の続きをしていたという。
新設学科の初担任だったためアドバイスを得るあてもなく、業務量の多さとヘビーな感情労働で精神的に追い詰められ、担任を2年でおりた。


担任をおりたあとも、別の学校で担任を持たずに教壇に立った。
理由は「お金がなかったから」。
鍼灸院にお客さんが来ず、一日の売上ゼロ円、数百円の日もざらだった。


家族を養えず困窮のプレッシャーから目先の仕事を引き受けて、数年間それで生活費を稼いだ。
けれど、教えるほどに「向いていない自分」を思い知った。
カネにはなるが心が死んでしまう、とついに先生の仕事を手放した。
手堅い収入源がなくなり、軌道に乗るまで十数年かかったという。

「自分だったら行きたくないですもん」

その頃、鍼灸院のお客さんが少なかった原因を振り返っていた。

 「なんか暗いし、治る気がしない。
 でも、そんな自分にぜんぜん気づいてなかったんですよね」

自分のことを知ろうとしないまま他者に関わるから、人生がうまくいかない。

浅い自己理解やぬるい自虐や自己批判では変わらない。
誰かやなにかのせいにして「自分は被害者だ!」と言ってもなにも変わらない。


自分のことばかり考えていた「超自己中」な自分にやっと気づいたあと、次の地獄をみた。
「自分を理解する」痛みのたびに自分の器の小ささを知っていく。


納得いかない状況を変えるには、現実を知らないといけない。
つまり自分の嫌な部分やずるい部分、弱い部分と向き合う、おぞましい時間をくぐる必要がある。
この作業は誰にもお願いできない。


人間関係のトラブル、お金の行き詰まり、つらい出来事がどんどん起こって自分の嫌な部分を露出させる。
それに吐きそうになりながら自己理解に向き合い続けたら、いつのまにか抜けていたそうだ。
その頃にはお客さんが増えて、なぜか休める日も増えた。


「あの頃にくらべたら、今なにがあろうと天国ですわ」


お客さんが「ここは気がいいですね」とくつろいだ表情で体を診療台に預けるほど、院内の空気が変わったという。


治療家として一生やっていく。
先生は二度としない。


「あの地獄で、自分に合わないものがわかりました」


地獄に進んで向かいたいとは思わない。
けれど、塩が甘さを引き立てるように「地獄が教えてくれる自分」がある。


そういう話を聴きながら、今日の鍼を刺してもらう。

 



 
地獄の背を踏み
向こうへ渡れ🐊



 

 

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