そうゆう関係

(あ。コメダ珈琲に寄って仕事に行こ)

 

寝不足の朝、ボサボサ頭で思いつく。

 

子どもを歩いて送ったあと、コメダ珈琲に寄ろう。
家で仕事する前に、コメダだコメダ。

 

思いついてジャケットのポケットに目についた本を入れて出かける。
お化粧を忘れる。

 

玄関で、ランドセルを背負った子どもに言う。
「送って、そのまま第3オフィスに行ってくる」

 

ふだん使わない言葉が口をついた。
子どもがすかさず訊いた。

 

「第2オフィスはどこ?」

「・・・どこだろう」

「第1オフィスは?」

「お母さんの部屋」


「第2オフィスは?」

「・・・どこだ」

 

「なんで、第3オフィス?」

「なんでだろうね・・・」

 

寝起きのぼーっとした頭で、自転車を押して子どもを送って、コメダ珈琲へ。
好きなカウンターの隅の席が空いている。
コーヒーを一口飲む。ふう。

 

あ、

 

「サードプレイス」のことか、「第3オフィス」って。
自分で言っててわかってなかったわ。

 

「サードプレイス」という言葉は、スターバックスみたいな、空間の雰囲気を重視する場がうたう「家と職場以外の、居心地のいい場所」をあらわす表現だった。
サードプレイスを、友人が「第3オフィス」と言っていて、それが口をついて出たらしい。

 

四つ折にたたたんだ印刷ミスの裏紙を出して、原稿の下書きや落書きをつらつら書く。
頭より、ペンを持つ手が考えている感覚。
コーヒーと、あんこモーニングで頭がゆっくり動き出す。

 

あ、

 

第2オフィスって「職場」か。
じゃあわたしの場合、「学校」が第2オフィスか。

 

今日は夕方から授業が始まる。
その前に家で仕事をすこし。

第3オフィス

 ↓

第1オフィス

 ↓

第2オフィス


の順で、移動して・・・
どうでもいいことをめぐらすうちに、頭がゆっくり動き出す。
この一時間ちょっとに、息をつく。

 

あんこを塗ったトーストをかじる。
甘いあんこがめちゃコーヒーに合う。

 

ジャケットのポケットから本を出して、ビブリオマンシーの要領で、てきとうにパッと開いたページから読む。

「諍友(そうゆう)」という、知らない言葉と目が合った。

 

日本で「諍」という漢字は、争いや、言い合い、ケンカ、いさかいを連想する。
どちらかというと攻撃的なイメージ。

 

だけど、中国には「諍友(そうゆう)」という、友人関係を表すことばがあるそうだ。
お互いに思うことを自由に話せる風通しのいい間柄、を意味するらしい。

 

本の一節から:

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「中国には、諍友(そうゆう)という言葉があるのです」

とにっこりとされ、続けて
「諍友というのは、お互いに自由に思っていることを話し合い、なおかつ友情をもつという関係です」
と言われた。

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今日、仕事のあとで人に会う予定がある。
オンラインで話したことはあるけれど、初めてリアルで会う人もいる。

 

相手を気遣い、配慮するのは大切だ。
「親しき仲にも礼儀あり」だし、「親しくなる前にも礼儀あり」だ。

 

だけど、相手をおもんぱかりすぎてもぎこちない。
配慮しすぎても、遠慮しすぎても、他者との距離は縮まらない。

 

天気やニュースやグルメなど、相手が誰でも通じそうな淡い会話の先、関係性の質の奥へ進みたいのだ。

 


とはいえ、閉じられた村社会のように、疲れるほど距離を詰めたいわけじゃない。

 

遠慮しすぎず、気を遣いすぎず。
節度と自由さがほどよく出合うポイント、ちょうどいい距離を、見つけたい。
相手に敬意を払いながら、踏み込み合える関係はきっと、あたたかい。

 

諍友、そうゆう。
そういうイメージをもって、笑顔で「リアルまして」してこよう。

 

本に素敵なキーワードをもらった。
コーヒーカップは空。
あんこトーストは胃の中。

 

満たされて、今日もいってきます。

 

 

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