【洋上日記】2023年6月22日 船旅77日目 ふと、パラレル・ワールド号に乗って

気温 30℃ 海水温 29 ℃
横浜から22406マイル

5時半に起きる。
朝日がのぼって10分後っぽい空を眺めながら、14階後方デッキをぐるり散歩。

6時からアイスランド編2の続きを書き始めた。
オンダールスネスのロープウェイあたりで、書きかけのまま止まっていた。
進めよう。

ライターの仕事を始めてまもない頃、エッセイを4ヶ月間書き続けたことがある。

2019年、ある書店メディアグランプリに参加した。

1) 全国のプロ・アマチュアのライターたちが、2000字のエッセイを書き毎週月曜日の〆切までにグランプリに投稿する

2) エッセイの採用/不採用が書店側によって判定される

3) 関門通過後、WEB掲載されたエッセイのランキングが、読者からのPV(ページビュー数)集計によって決まる

言葉で競うグランプリだ。

競走は苦手。こわい。
レースも好きじゃない。
戦うの苦手。争うのイヤ。

だけど、私のライターの実力がわからなかったので、「メディアグランプリに参加する」という「競う場所」に飛び込んでみたのだ。

どんなに「思いをこめて書きました!」と主張しても、面白くなければPVは伸びない。
数字が順位をシビアにたたき出す。

冬から春にかけて、週に1本、4ヶ月間、計17本を書き続けた。

書いた17本のうち、半分の8本がボツ、不掲載。
半分の9本は採用になり、書店のWEBサイトに掲載された。

そこからレースが始まる。

掲載される記事たちは、毎週、数十本ある。

それらの記事がどれくらいの人に読まれたかを示す数字が「PV(ページビュー)数」によって競われ、順位が書店側によって毎週発表された。

サイトに掲載された私の記事9本のうち7本が、週間ランキングで一位を獲った。
残り2本は、週間ランキング二位。

2019年春のメディアグランプリで、総合優勝した。



そのころ「Aurora」という曲をリピートで繰り返し聴きながら書いていた。
総合優勝したときも、この曲を聴いていた。

2023年6月22日、今日も聴きながら書いた。

2時間かけて続きを完成させ、日本のスタッフへ原稿を送る。
おなかすいた。

14階の右舷の外テーブルについて、みそ汁を一口のんだところでゆきちゃんが来る。

「おった」

なんかいる気配がしたんだよな。
それで食べ始めてたのに箸おいて、こっち来てみたら、やっぱりおった。

すげーなー、すげーなー、と二人で言い合う。
ゆきちゃんのいる左舷側のテーブルに移動して、一緒にごはんを食べた。

昨日、バミューダ海域あたりで、MAPS.MEの地図上から船のマークが消えたことをゆきちゃんに話すと、「へー」と。
ちなみに今朝チェックしたら、船の矢印が復活していた。

昨日だけ、表示されなかった。
どこにもいない私たち。

「でも私ら、おんねんな」

時間が一瞬とまって、再び流れた気がした。
言ってみた。

「実は、船ごと私たちは消えてて、私たちはそれを知らないで過ごしてるのかも」
「私も、今それ思った」

「竜宮城みたいに、船が日本に帰るころには20年経ってるかも。
みんな20年、歳をとってるかも」
「ありえるな。そういえば、海の色もいつもとは違う気がせん?」

せんけど。
ありえるよね。

「パラレル・ワールド号・・・」

ふと、出てきた。
「この船、パシフィック・ワールド号じゃなくて、パラレル・ワールド号なんじゃない?」

二人で大笑いした。

違う世界線の海を進む、パラレル・ワールド号。
陸上の自分と海上の自分、違う自分を生きている。のか?

ぴょん。となりの世界線へジャンプ。

午後2時、ノルウェー編2に着手。寄港地はトロムソ。

30分ほど書いて、ふと思い立ち、休憩に長い廊下を歩いて11階の前方デッキに出てみた。
風はゆるやかで、波も穏やか。

ここで肋骨折ったの、いつだっけ。
さかのぼってみると、ちょうど1ヶ月前だった。

たったの1ヶ月? ずいぶん昔に感じる。
なんて濃い日々なの。

1ヶ月前に財布をなくして、クレジットカードを止めた。
落ち込んだ気持ちを整えるために取り組んだワーク「なによりマシ?」で私はこう書いた。

「階段から落ちて骨折するよりマシ」

と書いた翌日に強風でぶっとんで肋骨ヒビ入れる。

んもー。

私という砲丸をぶんまわし砲丸投げをした、重たいドア。
向かって右側にいきおいよく開いた。バン!

記念に現場写真を撮ってみる。なに記念?
海に投げ出されなかった記念。
生きてる記念。
笑ったり泣いたりモヤモヤしたりスッキリしたりの全部、今日も私から生まれてくる記念。

今日の瞑想ワークショップは、他の企画との調整でいつもより遅いスタートだった。
夜10時10分から11時10分まで。
12名参加。
遅い時間にありがとうございます。

ぺぺ、マリア、ブライアン、Bさん、ゆりさん、ココちゃん、BB、初参加の人も数名。
「あさって行きます」
そう言っていた船のスタッフMさんも、来てくれた。
うれしい。

レクチャーのあと、ブライアンから始まった拍手が、静かに参加者たちに広がった。
いつもは静かに終わるのに、拍手をもらったのが意外で、照れながら話した。

「ありがとう。実は今日で10回目の開催なんです」

また、拍手。
ありがとう。11回目もやります。



講座のあと、脳みそクールダウンに14階後方デッキへ。
もうすぐ6月23日パナマ前日、日付が変わろうとしている。

丸いソファにクッションを置いて、寝っころがって、夜空をぼけーーー。
アルコールじゃないんだよな。水がいい。

久しぶりに瞑想ワークショップに参加した、ピースボートスタッフのココちゃんが「サヨと5分話したい」というのでソファで話す。
今日のワークショップで自分のハイヤーセルフと久しぶりにつながれた、と、いい笑顔。
よかった。

「サヨ、ほんとありがとうね」
「こちらこそだよ。最近、私、愛しかないなって思うんよ」

いきなり愛の話をする私に、「ほんと、そう」と彼女。
つながるときは秒もいらない。

ココちゃんとパラレルワールドの話をして、自己肯定感の話をして、量子力学「的」引き寄せの法則の話をしているうち、彼女が「やばい」「やばい」「やばい」しか言わなくなった。

「やばい。私、サヨと自主企画コラボしたい。やらない?」
「いいよ。なんの企画?」
「量子力学とかー、引き寄せとかー、自己肯定感とかー、宇宙の話!」
「なんかわかんないけどやってみようか」
「ありがとう! 企画立ててブッキングするね」
「うん。ありがとう」

どうなるかわかんないけど、面白そう。

5分の予定が1時間話していた。
「宇宙時間やね」と言って笑った。

日記書いていて、気づく。
私、「ふと」が多いな。

ふと、思いたって、なにかしてる。

「ふと」の分岐で、なにかに出会ってる。

これがコンパスを使っている状態なのかもしれない。
地図を手放して、コンパスの針が震える方へ進む。

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