【洋上日記】2023年7月3日 船旅88日目 満月がのぼる

気温 28℃ 海水温 29℃
横浜から 25246マイル
時差調整 -1時間あり

ホノルルに向かって航海中

5時すぎ起床。
昨夜2時半に寝たので日中に仮眠取ろう。

横浜港下船は7月23日、帰国まで3週間を切った。

6月末に初めてCとの鑑定セッションをしたのをきっかけに、10人ほど申し込みがどどどとはいった。

昨夜は、マンサニージョを出港したあと夜遅くにバンド仲間のSのセッションだった。

Sは、私とのセッションが終わって部屋に戻る階段の途中、セッションでの言葉をふと思い出して、涙が出た、と言っていた。
めったに泣かないんだけどね、と笑う。

「なんかほっとしたのかも。これでよかった、って思えたよ」

よかった。

そういえば、4月の乗船してまもない頃に参加した「月明かりの下で話しましょう」イベントで私の仕事について話したとき、初対面のSが「そのセッション興味ある!」と言ってくれていたのを思い出した。
いつでもできるとのんびりしてたら、7月になっていた。

7月になると、旅の終わりが見えてくるからか、船のあちこちで花咲く対話がひんぱんに、濃く、密になっている気がする。
「また今度話そうね」が減り「いつにする?」「空いてる日は?」と互いの予定のスキマが誰かとの約束で埋まっていくのだ。

Sと一緒にバンドが組めてよかった。
バンドフェスの朝に、彼女がヘアアイロンで巻いてくれた髪型は、人前でドラム演奏する自信をくれた。

7時すぎ、ヨガストレッチへ。
気持ちいい。
人気の先生なので、朝一番のクラスでも会場の床がヨガマットやバスタオルでいっぱいになる。

8時半、スタッフミーティングを終えたココちゃんと朝ごはんを一緒に食べた。
ココちゃんが提案した私とのコラボ自主企画が3つ(!)控えていて、内容について打ち合わせ。

「好きなこと全部やってみたい! サヨとなら面白そう! 企画案だしとくね!」

ココちゃんはすでに自主企画の日程を3枠おさえていた。
企画タイトルも日程も決定していた。はや!
「そのうち、いつかね」な速度じゃない。
情熱に火が入ったときのスピード感がかっこいい。

企画ラインナップは下記のとおり:

・自己肯定感&自己愛について
・量子力学好きな人集まれ!
・藤井風好きな人集まれ

バラバラで面白い。

どんなことを話すか、どんな内容にするかを話しながらごはんをもぐもぐ。
ココちゃんのお皿に盛ったパンの数もすごい。
現役ダンサーで、全身すみずみまで神経いきわたらせた生命力を踊る彼女の食欲が気持ちいい。
小柄な体にどんどんおさまっていく。

私は私で、今日もフルーツどっさり。
スイカの小山で棒倒しができそうだ。

おかずも味噌汁も基本しっかり食べるが、特にフルーツは毎日、別皿に盛ってたくさん食べている。
日本ではフルーツを毎日食べない、そもそもあまり買わない。
毎日たっぷり食べられる量の果物を買えば、食費がどんと上がる。
なので、カットが大ぶりで好きなだけ食べられる船上の果物環境がありがたくてしかたない。

ココちゃんが予約した企画名で、ひとつ気になることがあった。

「ココちゃん、『量子力学好き集まれ!』のタイトル、バリバリ理系の物理学専攻のロジカルな人が集まるかもしれない。
ココちゃんとこないだ夜に話したのは『引き寄せの法則』とか『思考は現実化する』とか、どちらかというと非科学的なスピリチュアル寄りの話だよね。
科学で証明できないものに否定的な参加者の方が来られるかも・・・」

「えー、そうか! どうしよう」

船内新聞の掲載タイトルは、申請後に変更できるのかな。
ぼんやり考えている間に次の予定の時間になり、またあとで!と別れた。


10時、部屋に戻って原稿の続きを書こうとしたけれど、目が疲れて頭痛もひどい。
30分仮眠して、イギリス編に取りかかる。

2時間くらい書いたところで集中が切れて、ベッドに転がって船内テレビをつける。
『Goodby Christopher Robin』(グッバイ・クリストファー・ロビン)が流れていた。
好きな映画だ。イギリスの田舎町の深い緑に見とれてそのまま最後まで観た。
ペンを握らない夫へ、妻が静かに繰り返す「You are a writer. (あなたは作家よ)」に私も被弾する。
こういうシンクロがたまに起こる。

戦争体験の過酷な後遺症に苦しむ彼は、おとずれた平穏な日々に時おりフラッシュバックを起こしてひどくおびえている。
幼い息子が手にした赤い風船が破裂する音に、動けなくなってしまう。
彼の友人が、彼の目を覚ますように、ゆっくりした仕草で別の赤い風船を割る。
彼がハッとする。
自ら風船を割る。息子も風船を割る。3人でどんどん割る。
踏んづけた明るい破裂音が森に響きわたる。
風船の赤と『くまのプーさん』が書かれる彼の手の向こうに、森の緑が映える。

映画のあと目の奥が痛み、30分眠る。


夕方、12階のプールデッキのテーブルで、バンド仲間のOの鑑定セッション。

彼が大学生だったころ、今より人を信じていたし、思いやりや愛を感じて「地球と生きていた」と言う。
社会人となり、地球と人にどちらにとっても善となるビジネスを始めた。
愛からスタートした思いやりの行為が、気づけば損得勘定の応酬にのまれ裏切られ、大切な仲間を仲間と思えなくなる苦しさ。
船を下りたあとの身の振り方を考えている彼は、経営者として、というより一個人としての「自分らしさ」を隠して、笑って耐えているように見えた。

セッションが終わって海を眺め、パイナップルを食べながら話していると1時間経っていた。

ふとある曲が浮かんで、私のスマホのプレイリストとイヤホンを渡し、あるバンドの曲を紹介した。
私が一曲分デッキを散歩して戻ると、リピートボタンを押したらしい彼が目を閉じて聴いていた。

ギターの難しいパートに「まじこれ指が死ぬ」と笑う彼は、最近は朝まで飲み歩かず「練習あるのみでしょ」と部屋で一人練習しているらしい。
いつも冗談を言って笑うちゃらちゃらした鎧の内側で、量が質に転化するまで、ストイックに努力と改善を続ける人だ。
陸でもきっとそうなのだろう。

Oとバンドが組めたのも幸運だったな。


19時半、5階レストラン前でAとばったり会って一緒に夕食。
お互い、ゆっくり話してみたかったので、夕食後も一緒に過ごした。

SNSの一切を辞めたという奄美大島出身の彼女は、独特の雰囲気がある美しい人だ。
なにがあったのか知らないけれど、SNSなど他者とつながるツールからキッパリ離れた彼女。

誰に聞いたのか「さよちゃんの鑑定セッション受けたい」と言われたときは驚いた。
ありがとう。

20時半から30分間、プールデッキの照明を全部消して夜空を眺めるイベントへ。

Aと一緒に14階デッキから空を眺めた。
ひとつしか見えなかった星が、消灯後、みるみる空に満ちてきて、星でいっぱいになった。

左舷側の水平線から、赤橙色をした大きな月がのぼり始める。
船のあちこちで歓声があがる。
Aと、すごいね、大きいね、と言い合う。
15分ほどで水平線からふっと離れた。
満月だ。



Aとおやすみなさいを言いあって別れて、14階後方デッキへ。

一人、丸ソファに座ってぼーっと月を眺めていると、ぺぺがやってきた。

「月がのぼるところ、見た?」
「見た。すごかったね」

ソファの向かいの椅子に座って、ぺぺがにっこり笑う。
ウェイン・ダイナーの本の話で盛りあがるうち、話のテーマが愛になった。

「結局、愛しかない」

唐突にぺぺが言う。

「私もそう思う。最近、愛についてよく考える」


すべては愛からの行動か、怖れからの行動か。
誰かへの怒りも、悲しみも、自分への憤りも、焦りも、不安も。
負の感情からうまれた行動は、怖れをさらにふくらませる。
怖れからの行動を言いかえるなら、愛を求める行動なのだろう。

どこまで伝わったか怪しい英語に、ぺぺは深くうなずいてくれた。
さすがGETの先生だ。
誰かからの嫉妬や攻撃のエネルギーアタックを受けてへろへろに弱っていた数日前と違い、ぺぺの目がいきいきしている。
怖れるのをやめて愛からの行動を選んだら、宿った目の光なのかもしれない。

「なになにー、なに話してんのー?」

コウキが飲み物を片手にやってきて、ぺぺの隣に座った。
二人は仲良し。

「愛について。スピリチュアルな話」

ぺぺが言うと、コウキがおどけて、うえーーっと顔を歪ませた。

「ぼくさ、大学院までずっと理系でさ。目に見えないものとかホントわかんないんだよねー」
「そうなの?」
「うん、スピリチュアルって理解できない」


意外だった。
コウキと親しいぺぺや、マーシーは、スピリチュアル要素が強い。
彼らと楽しそうに一緒にいる姿をよく見かけるので、てっきり目に見えない世界に親しんでいると思っていた。

ぺぺがコウキを見る。

「そのわりに、コウキは目に見えない不思議体験をよくするよね」
「うーん、そうなんだけど・・・」
「不思議体験って?」

コウキが説明してくれた。彼の部屋には「いる」らしい。
部屋でのんびりしているときに「ふと感じる」し、おかしな現象も起こっている。
どこか犬っぽい感じ。ドア開けたりとか。

「なんていうか、敵対の感じはしないし、まあいいかって」とコウキ。
最初は嫌だったけれど、いまは不思議な同居生活に慣れたのだそうだ。
前に、マーシーも「コウキは自分がスピリチュアルだって知らないのよね」と笑っていた。

「たぶんコウキは気づいてると思うよ」とぺぺ。
「うーん・・・理解できてない」

首をかしげるコウキに、ぺぺが微笑んだ。

「理解しようとしなくていいよ」





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