【洋上日記】2023年7月1日 船旅86日目 船上で初セッション

気温 30℃ 海水温 31 ℃
横浜から24794マイル
メキシコ マンサニージョに向かって航海中

5時起床。
アラームが鳴る前に目が覚める朝は、自分との距離を近くに感じる。
敵対していない。つながっている。
心が体を味方している。

7時、ヨガストレッチに久しぶりに行った。
講師の声にあわせて床に仰向けになって身体を伸ばす。
天井をぼけーーっと半目で見る。
昨日から着手したフランス編の続きを考えていると、天井から「サラサラした親切」という言葉がふってきた。
「ベタベタした親切」とは真逆の。
そういう親切を受けたのだった。



昨日のバンドフェスが終わった後、部屋に戻ってシャワーを浴び着替えてから、フランス編の続きに取りかかった。
次の予定までスキマの30分間でも、書き始めると心理的に楽になる。

5階レストランに向かう途中、Tとココちゃんとばったり。
ウェイターに案内されたテーブル席には、グアテマラで湖に行ったHさんがいた。
Hさんを二人に紹介し、4人で一緒に夕食を食べた。
湖での話、陰陽の話、大地をはだしで歩く話、宇宙の話。
脈絡もなく話がすっとぶのに、誰も振り落とされず楽しそうに話している。

ココちゃん、Hさんとレストラン前で別れ、Tと階段をのぼりながら立ち話。
大学を休学して乗船した二十歳の彼は、2年後の119回クルーズにも乗りたいとのこと。

「いいなー」
「いいでしょー。さよちゃんも一緒に乗ろうよ」

船に乗る前は「メンタルがヤバい状態」で、ほぼひきこもりだったという。
とにかく優秀な兄と比較されつづけて苦しかった、とTが言う。

「でも船に乗ったら、ほんっとーにいろんな人がいて、いろんな価値観があって。
学歴はひとつの側面でしかないってわかったんだよね。
それに気づけて、ラクになった」

最初に会った頃より目に光が増えて、Tが船旅を、学歴フィルターを外した世界を楽しんでいるのが伝わってくる。
船内イベントの動画編集を手伝ったり、マイペースに楽しそうに同年代の子や年配の方たちと交流している。


21時半にバンドフェスの打ち上げへ。
レストランの一角でめいめい皿に盛って食べる、ささやかなもの。
バンドフェスは今月下旬に3回目の開催を控えているので、終わりではない。
すでに次の曲の練習に取り掛かっている人もいる。
私も取りかかろう。最後のバンドフェスは2曲やるのだ。

打ち上げを途中で抜ける。

静かな席に移動して、Cと待ち合わせ。
初のバンドフェスのあとは、初の船上セッションだ。

パソコンを取り出し資料を表示させて、意識を整え、言語化のスタンバイをする。

この感覚、久しぶり。



ライター業のかたわら西洋占星術とコーチングのセッションを始め、5年で1500名以上鑑定してきた。
乗船する一年ほど前から、なぜかクチコミで申し込みが急に増えた。
多いときで日に10人オンラインセッション、早朝6時から深夜24時までセッションしていた。

そんな日々が一転、船旅生活にシフトすると、船の通信状況がよくなくてオンラインセッションが無理だと悟った。
それでセッションの新規受付を止めて、ぽかーんと。すっかり遠ざかっていた。

「オンラインがダメでも、対面ならできるよね。
船の上でもやってみたら?
自分でも気づいてない魅力や強みとか、行動のヒント、知りたい人いると思う。
セッション受けたい人がいるはずだよ」

と、親しいベテラン経営者の友人がアドバイスをくれた。

たしかに。
ネットが繋がらないなら目の前の人と、対面でやればいいのだ。
コロナ禍の前からやっていたじゃないか。
オンラインでもできるし、対面でもできる。

その人の資質、有形無形の恵み、関心の方向性、隠れた強み、優先する価値観、対人関係の傾向、人生の課題、エトセトラ。
その人に必要なものを言語化するセッション。

初対面の人に、しばしば

「どうしてわかるんですか?」
「前に話したことありましたっけ」

と驚かれる。


生年月日などをもとに作成した図形にうかびあがる「その人らしさ」は、説明できるものもあるし、「なんとなくそんな気がして」としか説明できないときもある(霊能力はない)。

言語化コンサルタントとしていろんな人の話をきいてきた。
時には「その人らしさ」が伝わる本やブログ作成を依頼され、本人の代わりにストーリーにして書いてきた。


ひさしぶりのセッション一人目は、船で出会ったCに、と決めていた。
北海道出身のCは「さよちゃんのセッションぜひ受けてみたい」と、初めて船で出会った頃からずっと言ってくれていた。
ありがたい。

占いの類だけでなくセッション自体を受けるのが初めてだというCは、私の伝える内容に「なんでわかるの?」と、笑う。
船を下りたあとの方向性に、判断材料とヒントを伝えると、

「やっぱりね。そっか。うん。わかった。やってみる」

と静かにうなずいた。
どこかホッとした表情だった。


もともと行動力のある彼女があえて立ち止まり、まっとうに悩んでくだす決断。


こういう瞬間にであうたびに、いつも思う。

私が言葉を尽くさなくても、本人がすでに答えを知っている。
答え合わせの時間。
「これでいいのだ」確信が深まって、安心して、挑戦にギアチェンジできる。
本来の自分らしさを思い出して、目に力を取り戻す。

セッション後、Cと話していると、どこからか見ていたらしく数人が集まって、男女6人のセッション申し込みが立て続けに入った。
日付が変わっていたので、明日以降セッションすることに。

バンドフェス、原稿、鑑定セッション、眠ったのが2時だった。



次の日、今朝5時に起きてフランス編の続きを書く。
壁のカレンダーをめくった。
7月になった。
地球をぐるりめぐって、残す寄港地はメキシコと、ハワイ。

朝食をとりに14階に上がると、亀仙人がいた。
今日も裸足、一人でご飯を食べている。
「亀仙人」とあだなのついた台湾人の白髪ヒゲの男性で、いつも裸足で薄いTシャツと半パン姿。
朝食を載せたトレイには、ししゃも3匹が乗った皿と、白飯の茶碗、ゆでたまご。

「ニーハオ」

挨拶してみた。
亀仙人はにこっと微笑んで、無言でゆでたまごの殻を割りはじめた。

部屋に戻る途中、階段でインドネシア人クルーのリャドとばったり会った。

「サヨ、昨日は観に行けなくてごめん」

休憩時間に仕事仲間のソフィアントやモクリース達4人でバンド演奏を観に行こうとしたら、『パッセンジャーエリアに業務以外では行ってはならない』と許可がおりなかったそうだ。
たしかに、プールデッキなどパッセンジャーエリアにいるクルーはみな業務中で、私服姿のクルーはいない。

「バンドの動画撮った?」
「友だちに撮ってもらったよ」
「いいね、動画みたい」
「友だちにエアドロで動画もらったら、今度みせるね」


『今度』には期限がある。
3週間後に船を下りれば、連絡先を交換していないクルーとの接点は消えるだろう。



朝9時から11時まで、フランス編の続きを書いた。

11時、自主企画の申請書を出しに行って、7月6日、7月7日の2日程を申請したあと、バンド仲間の元教師の方と昼食を一緒に食べた。

昨日ぽきっと折っちまった、テープでぐるぐる巻きのドラムスティックをバッグから出して見せる。

パラディドル奏法を教えてくれたOZさんの「予備があるから、それ持ってていいよ。練習したいでしょ」との言葉に甘えて借りっぱなしだったものだ。
とりあえずの応急処置で、折れたスティックの先を透明のビニールテープでくっつけている状態だ。

「明日、メキシコで新しいスティックを買ってOZさんに返します」
「お店、見つかるといいねぇ」

昼食後、ぺぺが私を見つけて、立ち話になった。
ここしばらく顔色がよくなかったぺぺは、ほぼ皆勤賞だった私の自主企画「書く瞑想」ワークショップに昨日は来ていなかった。
やっと体調がもどってきたから次は行くね、とぺぺが言う。

「風邪?」
「いや、それが、エネルギーアタックを受けていたみたい」

ぺぺが苦い顔で言う。

エネルギーアタック?
誰からかは訊かなかったが、強烈な念をくらって体調を崩し寝込んでいたそうだ。

早朝からヨガやトレーニングで身体を鍛え、一人しずかに大量の本を読みふけり、かといって孤立していない。
スペイン語の先生として、一人の人間としても仕事仲間や乗客たちに慕われているぺぺ。
聡明で人あたりのいい彼が放つ明るい気に、負の感情をいだくひとがいるのかもしれない。

「ねたみ、嫉妬、うらやみ、とか。そういうエネルギー?」
「うん」

かなりしんどかったのだろう。
いつもニコニコの彼が眉をしかめて、何かを思い出していた。
それから、我に返った表情で、ふっ!と息を吐いた。
負の風に煽られても炎を上げないと決めた一瞬を見た気がした。

「サヨに借りていた本、読み終わったから返すね。面白かった」

400ページ超えの本をもう読み切ったんかい。

「早いね。マリアが次に読みたいって言ってたから、彼女に本を直接わたしていいよ」
「OK」

またね、と手を振りあって別れた。
ロンドンの本屋で買った本2冊、ほとんど読めてないや。
15ページで止まった私、先にぺぺに貸してよかった。

夜、Oちゃんが私を見つけて、昨日のバンドフェス動画をエアドロで共有してくれた。

「あんなにたたけるなんてすごい!」

ありがとう。
私も、ノルウェーで撮影したOちゃんの散歩動画をエアドロで共有した。
草むらのなめくじを嬉しそうに眺めるOちゃんの朱色の服と、オンダールスネスの自然あふれる緑。
エアドロ便利だなぁ。

Oちゃんからもらった動画を再生してみた。
曲の最後でドラムスティックの先が飛んでいくのが映っていた。
撮影していたOちゃんは気づかなかったそうだ。
ぽーんと飛んだスティックの先端におどろいて、目を見開いた私の表情が映っていた。

部屋に戻って、ベッドで15分仮眠。
冷蔵庫のヨーグルトを食べて、原稿の続きに取りかかる。
1時間半、計4時間でフランス編を書き終えた。
ネットにつないで、テキストデータを日本のスタッフに送った。

たった一日が、数週間みたいな濃度だ。
あと3週間で、竜宮城みたいな日々が終わる。


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