【洋上日記】2023年5月24日 船旅48日目 しげじいだった

気温 14℃、海水温 14℃

朝から昼近くまでベッドにいた。

昨日より、肋骨の痛みがおさまっている。
目が覚めてもベッドに仰向けのまま天井を見ていた。
寝たままBBCニュースを眺めて、また眠りなおした。

寒くてくつ下を履いた。
ゴムがゆるくて締めつけない、楽なもの。

何度もうつらうつら眠りなおしていて、ふとわかった。
しげじいだ。

強風に3mふっとばされて落ちて頭を打たなかったこと。
軽いすり傷ですんだこと。
肋骨にヒビ程度ですんだこと。
風向きによっては海に投げ出されてもおかしくなかったこと。

子どものいないしげじいは、私たちきょうだいを可愛がってくれた。
もうすぐ10歳になる私の子どもを、しげじいは心から愛していて、いつもいつも気にかけていた。
病気で口もきけなくなっていたのに、亡くなる直前に私の子どもの名前を叫んだ。

しげじいが亡くなった後、保育園に通う私の子どもがときおり「しげじいがいる気がする」と話していた。

「ほんとだ、いるね」

そうなのだ。
見えないだけで、いる。

しげじいは長年、貨物船の船長をしていた。
海の厳しさを知っている。
理屈じゃなく、しげじいが護ってくれたのだとわかった。

88歳だったっけ、5年前だったっけ、亡くなったのは。

遺品整理をしていた私の母から、しげじいのくつ下を形見でもらった。
みーばーは、しげじい用にコツコツ買い続けたくつ下をタンスにしまい込んでいた。

くつ下屋さんが開けるくらい大量の、未使用のくつ下がタンスから出てきた。
それで、大量にもらった。

しげじいのくつ下は、みーばーが健康に気を使って、ゴムがゆるくて締めつけない綿100%のもの。

ゴムがゆるくて履いていて気持ちいいし、男性用なので私のふくらはぎ半分まで覆って、とてもあたたかい。
船旅にも持ってきていて、ほぼ毎日履いている。

黒、グレー、紺。
昨日はグレーで、さっき履いたのは紺。

しげじいだったんだ。
そっかぁ。

ありがとう、しげじい。

…………………………

感想やメッセージもお待ちしています!
しんがき佐世への質問・メッセージはこちら▶︎