【洋上日記】2023年5月9日 船旅33日目 急患発生、ドクターヘリ出動

気温27℃、海水温29℃
エジプトに向かって紅海を航海中。
デッキにいると吹き飛ばされそうになる、風が強い。
外に出る際は強風に気をつけるよう、船内放送が流れた。

昨日の星空シネマは、緊急事態が発生して延期になった。
夕方に急患が発生して、ドクターヘリが緊急要請されたのだ。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』をオープンデッキで観る予定で、はやばやとデッキチェアに座っていたところ、イベント中止の船内放送が流れた。

いつも行く後方デッキは規制テープが張られ、立ち入り禁止となっている。
後方にスペースを設けて、これからドクターヘリで緊急搬送されるらしい。

強風が吹き荒れるなか、ものものしい空気を裂いてドクターヘリが現れた。
どこの国のヘリだろう?
ヘリは慎重に14階後方デッキに向けて、スレスレまで近づいてくる。
ホバリングしている間も機体が風にあおられて揺れる。
おそらく船との距離は十数メートル。
ぶつからないかヒヤヒヤする近さに見える。

先にヘリから救急隊員が一人ずつ、ロープを伝って降りてきた。計二人。
それから急患を特殊な担架に乗せてヘリ内に引き揚げる。
患者がまずロープで引き揚げられ、それから救急隊員が一人ずつ、ヘリに戻っていく。

気づけば日は落ちていた。
紅海のどまんなか。
船の左側はエジプト、右側はシナイ半島だ。
患者を収容したドクターヘリはドアを閉め、船の左舷側の海、エジプト側の夜の空を飛んで見えなくなった。
どこの病院に向かったのだろう。
無事でありますように。

後日聞いた話で、この日の強風で勢いよく閉まったドアで手を挟んだケガ人が運ばれた、と聞いた。
また後日聞いた話では、ケガでなく急病人が運ばれたが甲斐なく亡くなった、と聞いた。

伝聞と憶測と想像が入り混じった話がまことしやかに流れるのは、船でも陸でも同じだな。

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