【洋上日記】2023年5月8日 船旅32日目 「洋上日記」を書く理由
7時半、目覚ましのアラームが鳴る前に起きた。
うれしい。
昨夜、仕事のやることを整理するために、ふせんに思いつく限りを書き出していた。
夜中2時まで起きていたのに、すんなり起きれたのがうれしい。
楽しい、とか、おもしろい、とか。
そういう感覚が、眠っている間も作用するんだ。
朝にジムに行った。
これも「いつか」念願だったこと。
20分ランニングマシンで走り、20分筋トレ。腹筋、ダンベル。
朝から汗だくになった。
気持ちいい。
ジムを出て海風に吹かれていると、汗が引いていく。
8時半、キウイとみそ汁とゆで卵の朝ごはん。
最近食べすぎで胃が重かったので、ちょうどいい。
14階はビュッフェスタイルなので、肉も野菜も果物も好きなだけ皿に盛れる。
そして、目がほしがる私はいつも、皿にどっちゃんこ載せまくって食べすぎる。
ああ、こんなに盛らなきゃよかった、といやしい自分が恥ずかしくなったりする。
節度をもって「心身にちょうどいい」を選ぶ人を尊敬する。
午後、14階の外のテーブルで一人、本を読んでいるメイビーに会った。
以前、メイビーというあだ名の由来を聞いたら、下の名前が「かな」だから「じゃ、メイビーで」と他の乗船者に名づけられたそうだ。
安直なネーミング爆誕。
ほかには「インパクトがほしいよね」とよくわからない理由で「インパクト」とあだ名がついた女の子もいる。
メイビーは、アイスランドのガイドブックを読んでいた。
ノルウェーの寄港地から離脱し、船のルートから離れて、1週間ほど一人で気ままに旅をするそうだ。
「離脱」は、船を一時的に降りて、個人的に好きなルートで旅をすることを指す。
その間も進みつづける船の旅程に合わせて、次の、あるいは次の寄港地から再度、乗船するのだ。
メイビーはアイスランドに興味があるらしく、1~2日の滞在が基本のピースボートのアイスランド滞在を延長するために、オリジナルの旅をするという。
手元のノートには、旅のプランが書かれている。
飛行機にも乗るらしい。
彼女は、昼間は食品会社の成分分析の仕事をしつつ、夜は中洲のスナックでアルバイトをして船の旅費を貯めた。
化粧っけがなく、飾り気もまるでなく、そしてよく笑う。すごく笑う。
「私、ゲラなんですよ~」
誰ともつるまず、たいてい一人で本を読んだり、持参した納豆をごはんにのせて食べている。
人からどう思われるか、という、自ら入りがちな透明のオリから、ずっと遠い場所で生きている素敵な子だ。
「ママがいい人で、お客さんもいい人ばっかりでした」
中洲のスナックでもママから気に入られ、お客さんたちにも親切にしてもらったという。
私は船を離脱して、オリジナルの旅をしたことはない。
すごいな。
しかもアイスランド。私には未知だらけ。
今度話を聞かせてほしい、とメイビーに言うと「いいですよ~」と笑う。
ところで、Somedayメンバーの方から、「寄港地の旅の話もいいけど、船での生活がどんな感じが知りたい」とリクエストをいただいた。
ありがとうございます。
うれしいです。
「オチがなくていいし、華々しくなくてもいい。船でどんな風に過ごしているのか興味あります」
と。
たしかに。
「船で暮らす日常」は、やったことがなければ想像しづらいかもしれない。
どんなものを食べているのか、人との関わり方はどうか、ふだんどんなことをしているのか。
ケガや病気、メンタル面など、どう対応しているのか。
寄港地での出来事を書いたレポートとは別に、「洋上日記」を書いてみるのもいいかもしれない。
今日は5月8日、出航日が4月7日。
なので、約1ヶ月ぶんの日記をさかのぼって書くことになる。
手元のノートには毎日、ぐっちゃぐちゃの字であーだこーだ書いている。
その手書きの記録を手がかりにして記憶を起こし、文章に起こす。
地球を一周する巨大客船に乗ったら・あーら不思議⭐︎
魔法がかかって人格がガラッと変わり理想の自分に変身、するわけでなし。
陸でへっぽこなところは、船でもへっぽこ健在だ。
はためには華やかな船上生活の、実はまるで映えない場面。
あるある。いろいろある。
文章に、写真を添えて、日記のカテゴリーで配信していく。
動画も添えられたらいいけれど、容量の負荷がかかるなら、せめて写真を。
写真もむずかしければ、せめて文字を。
「いつか」を現実に叶えた人たちが、じつは、「いつか」を願いつづける今の自分の、ほんの数歩となりにいる。
すごそうな人は、じつは元々すごくない。
すごくないと思っているあなたは、じつは元々すごい。
いつかを叶えに向かう自分への、飛び石のような日記になったらいい。
どうでしょうねぇ。
ハードル自分で上げんなや。
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