【ノルウェー編1】朝と昼を知って、夕方と夜を知らない

船旅で訪れるいくつもの寄港地には、ごく短い時間だけ滞在する場所がいくつかある。

ノルウェーのオンダールスネスは、今クルーズでいちばん短い寄港地だ。
朝7時に入港、午後2時には出港する。

5月31日から6月5日にかけて、ノルウェーづくし。
ノルウェーわんこそば。
オンダールスネスを皮切りに、途中、いくつかのフィヨルド(氷河がつくった入り江)を遊覧しながら、トロムソ、ホニングスヴォーグ、ロングイェールビーン、と4つの港をめぐる。

オンダールスネスは上陸許可が下りる時間と帰船リミットを差し引くと、現地にいられるのは5時間。

ヨーロッパに入ってから寄港地ラッシュが続いていたので、短い時間にあれこれ詰め込みたくもなかった。
詰め込むプランはそもそも、この土地の空気に合わないでしょう。

船で縁あって出会った女性4人で、のんびり散歩することに。
散歩してカフェを見つけたら、ゆっくりお茶しよう。
Wi-Fiあったら、そこで作業しよう。

こだわらないほうがきっとうまく流れる。

船を降りる前から気になっていた、港の近くの小高い山。
てっぺんには霧がかかっている。
ロープウェーが行き来している。

あれ、乗ろうか。

チケットを買う。
営業時間は10時半からとのことで、あと2時間ある。
それまでぶらぶら散歩。

港の近くに、スーパーマーケットや商店がこじんまりと連なっている。
トロールもいた。

北欧神話の始まりはじまり。
トロールは町のあちこちに、ちんまりいる。

スーパーの匂いって、日本も外国もそう変わらないのが面白い。
人工物と食品が一堂に収まると、こんな匂いになるのかな。
フランスのスーパーも、イタリアも、日本も、似たような匂いがする。

皮張りの立派なベビーカー。
高級スポーツカーの座席みたいに上等だ。

店内のリサイクルボックス。
町中にも、大きな分別ゴミ箱があった。

店のあるエリアを離れて、緑がたっぷり見えるほうへ、ゆるい坂を上っていく。

朝早いからか、住宅街にも町中にもほとんどひとけがない。
犬と散歩する女性や、ゆっくり歩く男性が、ぽつりぽつり。
静かなところだ。

草の匂いと、土の匂いがふわっとたちのぼって、ただ呼吸しているだけで気持ちいい。
ふだん窓のない穴ぐら部屋で空調の空気を吸っている我々にとっては、なおさら。

「空気が・・・いい・・・」
「はぁああああ」
「あーーー気持ちいい」
「ちゃんと呼吸できるぅー」

小道を歩きながら、空気を吸う、を4人とも味わっている。

私とゆきちゃんは一人部屋で、20代の二人はそれぞれ別のルームメイトと二人部屋。
窓のない部屋ぐらしは、みんな同じ。

「なめくじがいるー」

「どこー? ほんとだ」

道ばたでトロールがなにか訴えている。ように見える。
妖精や精霊の存在に、美しさキュートさではなく、おどろおどろしさや怖さをまとわせるのは、どんな意味があるのだろう。
神話や民俗背景を知らないと、ただの説教じいさんになってしまう。

ロープウェイで山頂に結ばれた山へは、歩いても登れるようだ。

時間になったので、ロープウェイ乗り場へ。
ぴかぴかに新しい。

しかも、ロープウェイが動くのを待つ間は、ゴンドラの中に入っててもWi-Fiがつながる。
乗り込んだ人たちは撮影したり、ネットにつないだり、LINEで連絡をしたりと大忙し。
私のスマホにもLINEがぽこぽこ届いた。

708mの山頂はまっしろな霧の中。雪も残っている。
風がないので、寒いというより気持ちいい。
しっとりした空気が肌を湿らす。

山頂のカフェからは、風景が一望できる。

ホットチョコレートを注文した。
シナモンがかかっていて、ピリッと何かのスパイスも効いている。
あったかくて、美味しい。

霧が晴れると下が見え、霧が包むとまわりは真っ白に。
霧が晴れたとき、私たちの乗ってきた船が見えた。

よっしゃ。仕事じゃ。
自然に囲まれた場所にそぐわない、無粋な機械を取り出してテーブルに載せてる私。
わかってる
でもやる。

意固地でも意地でもない。
結局ひとは、したいことしか、しないのだ。

私は伝えたいのだ。

そのための大事な道具なのだ。
Macをなでる。今日もよろしくね。

データのアップに1時間半。
他の人たちはめいめい、自由に散歩したりまったりしている。
私もイギリス以降のデータをなんとか同期して、MacBookを閉じる。
カフェの外へ。

5時間はあっという間。
帰船リミットが近づいてきた。
ロープウェーに乗って下山。

この「近所の山にちょろっと登って帰ってきた」的なプチ旅感。
あっという間未満の、あっという間。

ほんの5時間だけ陸におりたった、オンダールスネス。
朝と昼を知って、午後と夕方と夜を知らない場所。



知ったことより知らないことが多いまま、さようなら。
人との出会いとおんなじ。

船が港を離れていく。
数日かけてのノルウェー寄港は、始まったばかり。
オンダールスネス、トロムソ、ホニングスヴォーグ、ロングイェールビーン。

船旅のスケジュールがつくる、濃淡さまざまの時間。
濃くても薄くても、おもしろい。

いろんな旅の時間を、船の時計で刻みながら先に進む。

北上するほどに夜が明るくなっていく、不思議な時間帯へ向けて船は進みはじめた。

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