【洋上日記】2023年5月2日 船旅26日目 「まいにちフルーツを摂っています」

7時半に起きる。体と頭がだるい。
雑念がせかせかして、落ちつかない。
昨日はいろんな人と一緒に過ごした時間が長くて、自分のペースがつかめなかった。
今日は一人で過ごすことにする。

スリランカを離れて、次のエジプトまで10日間、長めの洋上生活が続く。
どうでもいいけど何度打っても「養生生活」とまっさきに変換するMacBookAir。

【養生】健康に注意し、病気にかからず丈夫でいられるようつとめること。
はい。

14階レストランで朝ごはん。
グレープフルーツをどっさり食べる。養生養生。
新鮮な果物をまいにち食べられるのがうれしい。
自宅だと果物を買うのをためらい、ケチって、たまーにしか買わない。
私にとって「まいにちフルーツを摂っています」と言える人は、精神的にも経済的にも豊かな人だ。

今日はみーばーの誕生日。90歳。たしか。
毎年電話しているが、今年はおめでとうの電話ができない場所にいる。
心配性のみーばーに、船旅に出ることを言いそびれてしまった。ごめんなさい。
みーばー、お誕生日おめでとう。

10時半、14階の後方デッキへ出る。
いつもの丸いソファに先客あり。
ほかに座れる場所は、日差しが照りつけている。暑い。

すこし早いお昼を食べて、午後から船旅レポート、スリランカ編に取りかかる。
原稿に着手する前に、まず起こったことを時系列でノートに書き出す。
2時間半かかる。

午後から元船長の講座「インド洋の航海の雑学」へ。
会場は人でいっぱい。
船の構造などの雑学や、船の速度の測り方など。
船の速力の単位はノット。
1ノット=1.852キロ。
「2を掛けて、1割引くとだいたいわかります」
なるほど。
パシフィック・ワールド号は15~18ノット程度で航行しているので、時速にすると約30キロのスピード。

パシフィック・ワールド号が建造されたのは1995年。
7.7万トン、全長261m。船幅32m。
収容人数は2400名ほど。
船の揺れ防止に、左右の両舷(りょうげん)に長さ5.4mのスタビライザーがついている。
いつもは船体に収められていて、波が高いときはスタビライザーを機動させ、トビウオのように翼を広げ船体のバランスをとる。
など。など。
船の雑学、おもしろい。

海賊の話もされていた。
これまでに2回、航海中に襲われたそうだ。
1度は機関銃で船体を撃たれ塗装が剥げ、またあるときは海賊に船に乗り込まれてクルーが取り押さえたこと。
すごい。
海賊警戒海域を航行する際は、護衛艦を2隻つけて進み、警戒エリアを抜けて護衛艦が離れる際は、海賊や不審船に傍受される可能性を考慮して、護衛が離れる旨は無線でやりとりナシに、しれーっと離れていくらしい。
傍受された場合、護衛が抜けたなり海賊が襲ってくるケースもあるという。
それで、護衛艦が離れたあとは、海賊が入ってこれない紅海入り口まで全速力で走り抜ける!のだそうだ。

パシフィック・ワールド号の全速力はどれくらいなのか、船長は言わなかった。
気になる。

夜は「芸達者祭」なるイベントがあって観客席で参加したけれど、うわの空だった。

私は、楽しむのが得意なほうではない。
楽しむ以前に、屁理屈をこねがち。
楽しむときに、人の目を気にしがち。
楽しむこと自体に、罪悪感をいだきがち。
「楽しむ」ってなんだろう。
誰かを楽しませるためには、まず自分が楽しむこと。

23時、一人で14階の前方デッキに出た。
後方デッキは明かりが多いが、前方はほぼ真っ暗なので晴れた夜は星がよく見える。
誰もいない。
ぼけーっと星を眺める。
南十字星が見える。月がきれい。
月に照らされた雲が飛んでいく。

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